出口やについて
山梨県の豊かな自然に包まれたその場所には、富士山の威厳ある姿が背景としてそびえています。
東京から車でわずか2時間。その旅路はまるで、現代の日常を脱ぎ捨て、静寂と歴史に満ちた特別な世界へ向かう道のりのよう。
出口やが誕生したのは明治38年。時代は日露戦争終結の頃、人々が新たな希望を胸に未来を描いていた時代でした。その建物は、時の流れと共に幾多の物語を見守り続けてきました。
畳の上に座り、窓からの景色を眺めれば、まるで過去の世界へとタイムスリップしたような感覚に浸れるでしょう。古い柱の年輪、光を柔らかく透かす障子、それらが静かに物語るのは歴史の深み。そして、あなた自身の物語がそこに紡がれていくのです。
庭では四季折々の草花が静かに息づき、自然の移ろいを感じられる空間が広がります。夏の日差しの下、家族や友人と賑やかなBBQを楽しんだり、夜には花火の鮮やかな光でロマンチックなひとときを。冬には、薪ストーブの柔らかな炎が揺らめき、星々が澄んだ夜空に輝く特別な時間が待っています。
安全に配慮されたストーブが温もりを届け、寒い季節も心地よい安らぎを提供します。
出口は単なる宿泊するだけの施設ではありません。それは地域の歴史と文化を体感できる、特別な場所。
そこに集う人々の笑顔や語られる思い出こそが、この建物の新たなページを紡ぎます。そして、そのページが未来へと受け継がれていくことを願っています。
この場所で過ごす時間が、訪れたあなたの心にどんな物語を刻むのでしょうか。それはきっと、ここでしか出会えない、かけがえのない瞬間になるはずです。



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工事に携わってくださった関係者の皆様、
そして再建に際し多大な るご支援を賜りました
地域の皆様に、ここに改めて心より御礼申し上げます。
Your memories will shape the journey of future!

オーナーと出口やの出会い
村の中心に佇むその古民家は、重厚な長屋門と風格ある佇まいが特徴で、かつてこの地の人々の暮らしを支えた重要な存在だったことが伺えました。しかし、時の流れとともに建物は長年の風雨に晒され、人々の手から離れた年月が深い傷跡を残しました。雨漏りや腐朽した柱は、かつての輝きを失わせ、建物は静かに朽ちていくように見えました。
2015年、この雄弁な姿の古民家に心を打たれ「この建物を残したい」と強く思った私は所有者から譲り受け再建を決意しました。所有者もこの建物、そして過ごしてきた時間をとても大切に思っており私の思いに共感してくださりました。譲渡当初、建物の水平が最大15cm沈下し、垂直も大きく狂っているという深刻な状況にありました。それでも、曳家工事によって建物を持ち上げ、しっかりとした基礎を新設することで水平・垂直を修正し、建物は再び力強く立つ姿を取り戻しました。
ヘリテージマネージャーとしての専門知識を活かし、訪れる度にこの建物の価値を再発見しながら古民家再生を進めていきました。二階部分には蚕小屋がありましたが、長年使用されることなく放置され、使われることのない道具や木材、埃が積み重なっていました。それでも、奥座敷や畳の部屋、縁側には改修の手が加えられておらず、創建当時の意匠が美しい形で残っていました。この貴重な意匠を未来へ継承するため、建物をゾーニング分けして改修プランを立案しました。
歴史的価値の高い部分は可能な限り元の姿を保ちながら修復を施し、安全性や快適性の向上が求められる部分には現代の建築技術を導入。耐震性能の確保やサステナビリティを考慮した素材の選択にも配慮されました。この再生プランは、建物の歴史的意匠を守りつつ現代の生活に調和させるという挑戦そのものでした。
この施設では、地域の歴史や文化を体験できるだけでなく、薪火を囲むひとときや焚火を楽しむ里山の暮らしを満喫できるよう設計されています。さらに、この取り組みは地元の雇用創出にも寄与し、地域コミュニティと強く結びつく存在となりました。
